イギリスのコメディドラマの”awkward”な笑いの魅力





“awkward”とは、ぎこちない、気まずいなどの意味。

イギリスのジョークはほとんど侮辱だと取られかねないようなきつい表現や、やたらと自虐的に自らを下げてまで、マジなのか冗談なのかスレスレのブラックユーモアをかまして笑いを誘うユニークさをもっています。

それはイギリスのドラマの中にも現れていて、「Cringe comedy」というジャンルが中でも特徴的です。周りから変な目でみられるような妙な行動や言動をとってしまった時のなんともいたたまれない”awkward”な状況や雰囲気を自虐的かつ滑稽に、痛烈に演出し、笑いを誘います。日本でいうところの“おくゆかしさ”にちょっと近い感じですね。どこか後ろめたいというかなんというか、そういう空気が笑えるというか、「笑うしかない状況」っていうんでしょうか。変な笑いがこみあげてくるタイプの笑いです。アニメの「ちびまるこちゃん」のユーモアが感覚的に一番近いかな?

今回は作品の紹介を交えながら、イギリスのウィットに富むちょっと変わった笑いについて書いていこうと思います。

Skins

ある高校生グループが主人公の青春ドラマ。リアル寄りで生々しい生活感がドラマ全体の雰囲気で溢れています。ドラッグ、セ〇クス、ナイトクラブにみんな集まって踊って酒飲んで薬キメて、そんなイギリスの若者の日常(?)が描かれている作品。

まぁ本当にあんな世界が広がっているかどうかというと、私はイギリスに住んだことも、いったことがないのでわからんのですが、とにかく描写が生々しいんですよね。主人公たちの生活も言動も。そこまでコメディタッチというわけではないんですが、ある種の現実を皮肉って笑いに変えているような表現をしているところがあるので、まぁ観て頂ければきっとわかると思います…たぶん!

The Inbetweeners

高校生男子4人組が主人公の青春コメディドラマ。かなりコメディ色の強いドラマです。

主人公たちは特別イケているわけでもなければ、かといって特別ダサいというわけでもなく、クラスのスターでも日陰者でもない、つまりよくいる「普通」の高校生たち。全てにおいてアベレージで、高校2年生で青春時代のど真ん中、何から何まで”Inbetweeners”な少年たちの高校生活を描いた作品。

そんな彼らの目的はかわいい女の子をゲットすること。ありがちで健康的ですね。ですがまぁお察しの方もいるかもしれませんが、うまくはいかないわけですよ。しょうもないことにこだわってうまくいかなかったり、色々やらかしては最終的にどうしようもない結果に終わっていくというようなそんな彼らの苦くもどこか開き直った日常を描いています。

作品の描き方がかなり自虐的で、特に主人公の一人、サイモンは哀れみすら感じるくらいにひどい扱い。ほんとかわいそう


大体彼が痛い目にあうのは、いつもつるんでる他の3人のせいでだったり、本人が変なところでぬけてるところのせいでもあるんですが、彼は劇中でもっとも扱いがひどくて、例えば学校で開かれるファッションショーに出演することになって、きわどい衣装を急いで着替えたために片〇マがはみでてしまい、それにきづかずステージをドヤ顔でキャットウォークで練り歩き、調子にのってポーズまで決めるもんだから余計にはみでたタマを衆目に晒すハメになったり、(会場はドン引きで、後にペアのカーリ(サイモンの幼馴染で意中の子)にそのことが発覚して嫌われてしまう)、同じく主人公の一人、ジェイのいつものホラ吹きをなぜか真に受けて相手が12歳の少女だとしらないまま、野外に連れ出し、「これで安全だよ」と下半身裸でコ〇ドームのみを装着した姿を彼女にさらして危うく警察を呼ばれそうになったり、せっかく免許とって車を手に入れたのに一日でおしゃかにしたり(大体他の3人のせい)、とにかく物語の中でも悲惨な役回りを担うことが多い不運なキャラなんですよね。シーズン3の最終回は本当にかわいそすぎて変な笑いがでました。しかしそういうところが面白いのがこの作品で、「もうここまでくると笑うしかねーわ」と思わせるような思わずこみあげてくるような笑いを誘うんですね。

他に特筆すべきなのはギルバート校長。かなりの皮肉屋で、教師の本分などクソ食らえという感じで、転校初日のウィルにしょっぱなから彼を痛烈に皮肉り(ウィルが無意識に失礼なことを言ったせいでもあるけど)、その調子はシリーズを通してずっと安定して続きます。とにかく生徒を寄せ付けず、権力も惜しみなく行使して、生徒の相談にも親身になることもない。でもちゃんと仕事はしてる。体もデカイので威圧感もたっぷり。ウィルは冒頭でギルバート校長に目をつけられているので特に風当たりひどくて、このやりとりがまた面白いんです。

特にInbetweeners movieの彼の卒業生たちに対する演説は必聴物。「君たちのことは一瞬にして忘れる」という強烈な一文に始まり、普通は思っても言えないようなことを堂々とスピーチするこの姿。ほんとうにすがすがしいくらいの“クソ校長”っぷりを惜しげもなく最後にさらしていく姿は「ここまでくるとかっこいい」とすら思わせてくれます。そこに痺れるあこがれるゥ!

Misfits

軽犯罪を犯した20前後の青年達が主人公のドラマ。SFモノで、ある日主人公たちが社会奉仕活動のために集まったコミュニティセンター周辺に謎の嵐が発生、なんとか屋内に逃げ延びようと必死に駆け回るもかなわず、その場にいる全員が雷に打たれてしまう。

しかし奇跡的に助かり、その日の奉仕活動を終えた彼らだったが、それを境に主人公たちが妙な超能力に目覚めていき、いつもの日常が少しづつ変わっていく、ちょっと変わった日常生活を描いた青春SFドラマ。

全体的にアンチヒーロー的ドラマであり、正当派ヒーロー物を小バカにしたような皮肉的表現がこの作品の肝の部分。

主人公たちは社会的に素行にいろいろと問題がある社会不適合、”Misfits”な青年たちで、能力に目覚めたことを自覚しても、相変わらずドラッグだの酒だのセ〇クスだの、結局いつもの非生産的な日常を送り続けて居たり、目覚めた能力自体がどうしようもないくだらないモノだったりまったく使い物にならないなど超能力という「非現実性」と、それでもなお「うまくいかない現実」が絶妙に絡み合って独特な”awkward”な笑いを生み出しています。例えば、ワープできる能力をもつ人が出てきますが、ワープ距離が数メートル程度だったり。ワープするのにも時間がかかってたし、これじゃ歩いた方が早いじゃん…。

アメリカのドラマ「ヒーローズ」とはまさに対局をなしているといえるドラマで、ヒーローズは世界を脅かす巨悪に立ち向かうために実に壮大なスケールで世界中を巻き込んで超能力に目覚めた能力者たちの悪と正義の戦いを描いていくのに対して、Misfitsは主に彼らのいる町の中でしか物語が発展せず、悪も正義もなくビターでウィットな彼らの日常の中に超能力を絡めて描くことにフォーカスされており、かなり小規模、ローカルです。類似したテーマなのに、楽しみ方が180度違うこの作品のひねくれ具合は中々のものです。

Season1,2の主人公の一人のネイサン・ヤングはこのドラマの顔ともいえるキャラクターで、彼を一言で表すならバカ。いや、クソバカでしょうか。

本当にしょうもないことしかしないキャラクターで、他のメンバーからいつも「なんだこいつ…」「信じられん…」「なんてバカなやつなんだ…」みたいな、驚愕と軽蔑が入り混じった複雑なしかめっ面を向けられるんですよね。いや実際本当に信じられないようなバカなことをするんですが。でもこれが本当にバカバカしくて”awkward”で面白い。

彼もどこかかわいげのあるバカという感じのキャラクター性があって、憎みきれない感じなのもポイントの一つ。

Black Mirror

かなりブラックなユーモアにあふれるドラマ。社会風刺的な側面を強くもっていて、日本でいうところの「世にも奇妙な物語」に近いです。正直コメディと表現するのは誤解を生みそうな感じがしますが、個人的にはこれもコメディの一部かなと。最初のシーズンの1話からイカれていて、イギリスの王女が何者かに誘拐されてしまい、犯人からその証拠に彼女を監禁していることがわかる動画がWeb上にアップされます。

そのさらわれた王女があまりもの恐怖に泣きじゃくりながらくしゃくしゃになった顔で犯人から伝えられた王女自身の解放条件を話すわけですが、彼女の口からでた言葉はなんと、「大統領がブタとセ〇クスするさまを全国生中継で配信する」という予想の斜め上の要求でした。

王女の誘拐という非常に頻拍したシリアスな状況の中、「ブタとセ〇クスしているところを生中継」という、あまりにもお下劣で誰も得しないような、冗談みたいな要求に対して、大統領はまだ事態が呑み込み切れてなくて「何かの冗談か?」と周りの部下に意見を聞くんですが、彼らは既に把握済のようで一様に神妙な顔をしていて、「いえ、本当です。」と返すわけです。この温度差よ。

こうして、事態はそんなクソみたいな犯人の要求を軸に展開して世の中全体を巻き込んでいくレベルの騒ぎにまでなっていくわけですが、クソみたいな要求をどうにか回避するために、大統領本人はもちろん、みんなめちゃくちゃ必死になるんですよね。それに対して同じくWeb上の動画を見て知った一般人たちは「大統領がブタとやるって?」「マジかよ」みたいにお祭り騒ぎみたいになっちゃってたり。色々と必死なのに全てがまぬけで滑稽に見えるあの感じが、まさにブラックユーモアという感じです。

というわけで…

とまぁこんな感じでイギリスの独特のユーモアについて書いてみました。

思ったのですが、イギリスのドラマってアメリカのドラマみたく美女や美男みたいなわかりやすい感じの人を出さない傾向があるように見えますね。出演者たちのルックスは確かにある程度は整っているんですが、ゴージャスではないというか、現実感があるというか。そのあたりにいそうな感じなんですよね。全体的に。たまぁーにSkinsのトニーとエフィーとか、Misfitsのアビーみたいな美形の人もでてくるにはでてくるんですが。本当にたまにです。イギリスって美男美女いっぱいいると思うんですがね。エマ・ワトソンもいるし。個性派重視ってことなんでしょうか。私としてはそっちの方が面白いので良いのですがね。

コメディドラマにおけるアメリカとイギリスドラマとの違いは、アメリカはどんなにコメディなドラマであっても、最終的にはどこかに救いがあるというか、やっぱりヒーローの国なんだなぁと思わせるものがあって、主人公たちがどんなにダメでも最後は「目立つ奴」になるんですよ。みんなの注目を集めることになって最終的に“ヒーロー”になる。みんなに認められるというか、一目置かれるというか。そういう感じになる。

でもイギリスドラマはそんなことにはならない。本当に最後までどうしようもないくだらない結果に終わって、誰かの注目を得ることもリスペクトを得ることもなく、むしろ反感を買うだけだったり、主人公たちがただ破滅してしまうこともあるくらい。「マジ俺悲惨だろ?笑えるよな。」みたいな感じです。そういうところにもイギリス特有の自虐性が現れていると思うんですよね。

なんだかイギリスの人ってジョークにある意味命かけてるようなところがあると思うんですよね。時には自分を下げてでも、如何に笑えるか。如何にばかばかしいか。如何にみんなに笑ってもらえるか。笑いのためなら自分をコケにすることもいとわない。そのあたりにフォーカスを置いている気がします。

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